「さいきんのはまり」

只今、二年ぶりのお芝居の稽古の真っ最中です。
かの手塚治虫さんの作品をもとにした「銀と赤のきおく」、作・演出は池田政之氏。
過去二回にわたって、「桜シリーズ」でもお世話になった方です。
この池田さんがおっしゃるんです。
「私は、純米酒しか飲みません!」

はい、今回のテーマはこの【純米酒】です。
お酒の話ですので未成年の方がいらしたら、あくまでも読むだけですよ。
読んで飲みたくなっても、お酒は二十歳から!! ね。

このTOSの私のプロフィールに、「割と凝り性で、はまるときにはカットインで一気にディープなところまで」とあります。それまで全く興味がなかったわけではないけれど、ゆる〜い助走期間を経て、ある日突然、何かのきっかけでガーッとのめり込むというのがいつものパターンです。 そして最近まさにそういうはまり方をしているのが、実は『日本酒』なのです。

お酒にはまってるというと、もんのすごーく呑んべぇに聞こえるので、一応書いておきますが、昨年のダイエット中に半年間禁酒したせいで、とてもお酒に弱くなりまして、ちょっと呑むとすぐ酔っぱらってしまう。それに、健康と美容(!?)のことを考えると、時々飲むのがよい。というわけで、今ではせいぜい一週間から十日にいっぺんしか飲んでいません。そのくらい極端に酒量が落ちているので、否応なく量より質を考えるようになったわけです。いちどきにそんなにいっぱい飲めないのですから、どうせならおいしい物を、というのはお酒でなくたって考えますよね。

私は鹿児島の出身です。鹿児島といえば芋焼酎。子供の頃から周りの大人が飲む芋焼酎の匂いが、お酒という物の匂いだと思って育ってきました(鹿児島でさけと言えば普通に焼酎が出てきますから)。ですから東京に出てきたとき、みんなが芋焼酎はくさいからといって飲まないのがとてもショックでした。酎ハイが人気になって、その後麦焼酎やそば焼酎、米焼酎などをみんなが飲むようになっても、芋は誰も飲まないのです。そんな、東京では誰も見向きもしなかった芋焼酎が、今では全国的に大ブームになり、おいしい芋焼酎がいつでもどこでも飲めるようになったので、とてもうれしい反面、やや複雑な思いもあったりして。

でもまぁそれはそれでいいのです。ただ、どうも私の中には天の邪鬼な部分があるのか、今いちばん流行っている物、ではない物に目がいくのですよね。(タイガースのファンになった時も「ダメ虎」なんて言われていた頃でした。)
焼酎の出荷量は、ついに日本酒の出荷量を上回ったそうです。ですから、今では日本人に飲まれているお酒のナンバーワンは、『日本酒』ではなく、焼酎だと言えるそうな。そういう、いささか人気にかげりのある日本酒が、最近は気になって仕方がないのです。
以前から、全く飲まないわけではなかった日本酒ですが、だからといって、そんなに好きこのんで飲んではいませんでした。日本酒と言えば酔いやすい、2日酔いがひどいなど余り良いイメージはありませんでしたしね。それに、日本酒は種類が多くて、何がなんだか分からないというのもありました。本醸造だ、大吟醸だっていったいどういう意味だよ、と思っていたくらいです。

そんな私の耳に、ある日気になる言葉が飛び込んできました。
「私は純米酒しか飲みません!」
そう、頭で書いた池田政之先生の言葉です。
池田先生は、本当に日本酒のしかも純米酒しか飲まれません。他の酒は、乾杯のビールすら飲まないのです(うちのマネージャーは乾杯用に見つけてきましたよ、小さい缶入りの純米酒)。居酒屋に行っても、純米酒がなければすぐ他の店へ。その代わり、純米酒であれば銘柄は問わない、という方です。純米じゃないのを飲んだら具合が悪くなる、とまでおっしゃるのですから、そりゃもう徹底しています。
そんな池田先生に、純米とそうでないのって何が違うんですか?と聞いたら、純米はお米だけで作っているが、他は醸造アルコールを入れてるんだとのこと。私はなんだか分かったような分からないような感じで「へーそうですか」と答えていました。それでも、何となくこの「純米酒」と言う単語はインプットされたのでした。それで、たまに日本酒を飲むときはなるべく純米とラベルに書いてある物を選んではいたのですが、それほど好んで飲んでいたわけではありませんでした。

それが、今年になって近所の居酒屋さんでたまたま飲んだ日本酒が(もちろん純米酒です)、びっくりするほどおいしかったのです。今までの私の、日本酒に対するイメージを一新するものでした。そして、結構飲んでしまってかなり酔ったにもかかわらず、翌日2日酔いになっていないのです。早速、ネットで検索して夕べ飲んだ銘柄を調べてみました。案の定、日本酒好きの間ではとても知れ渡っている、ある地酒でした。かといって、日本酒に詳しくない多くの人(まさに私のような人)にはあまり知られていないのです。もちろん大メーカーや超有名銘柄なんかではありません。それをきっかけにいろいろ調べてみたら、自分は “日本酒のことをあまりにも知らないのだ”ということが分かりました。

まず、日本酒は酒税法により、

・日本酒もしくは清酒としか表示できないいわゆる普通酒と呼ばれるもの。
・本醸造酒。
・特別本醸造酒。
・純米酒。
・特別純米酒。
・吟醸酒。
・純米吟醸酒。
・大吟醸酒。
・純米大吟醸酒。

以上に分けられるそうです。それぞれについては詳しくは書かないので、興味のある方は調べてね(他にも製造方法の違いや使っている米の種類などいろいろありますが)。さて、大きく二つに分けると『純米』がつくものと、つかないものがあるのにお気づきですか? この『純米』がついたものが、原材料に米と米麹だけを使ったお酒。池田先生が飲むやつ。純米がついてないものが、米と米麹に醸造アルコールというものを添加して造ったお酒。池田先生が飲まないやつです。
この醸造アルコールの添加には香りを引き出すとか、味にキレを出すなどの効果があるそうですが、賛否両論、様々な意見があります。個人的にはどっちがいいか分からないので、おいしければどっちでもいいのですが、今のところ池田先生の強い影響下にあるので、当分は純米派でいこうと思っています。

そうして全国のいろんな地酒をネットで、そして雑誌で調べて、とにかくいろんな情報を頭に入れると、さてそれでは実際それはどんな味がするんだと気になるわけです。
雑誌などではたとえば、“メロンの香りがして、口に含むとふわーっと旨みが広がり、それを酸がすぱっと断ち切るようにでて切れていく・・・”、とか説明してくれるわけですが、飲んだことにない人でこの意味が分かる人いますか?
残念ながら、文字情報だけでは味はわからない。銘柄を知っても飲まなければ本当に分からない。というわけで、あれやこれや試してみたいのですが、例の近所の居酒屋だけでは種類が限られている。で、再びネット検索。ありましたよ。やっぱり近所で地酒を売りにしている居酒屋さん&酒屋さん。うっひょひょー! さぁ、日本酒三昧だー!!!

とはいっても、一週間から10日にいっぺんな上に、少し飲んだらもう味が分からなくなる程度のノンべぇさんなので、その歩みは亀のごとし。自分の舌で覚える以上に、ますます文字情報ばかり入ってくることになるのです。
それでも、いろんな事を覚えました。日本酒はいいお酒ほど冷やして飲むものだと思っていたのですが、それはとんだ勘違い。お燗するのはもったいないなどというのは、全く誤った認識だったのでした(結構そう思ってる人多いんじゃないかな)。どんなお酒でも、たとえ生酒とか生原酒というたぐいのものでも、たとえ大吟醸酒でも、たとえラベルに冷やして飲んでと書いてあったとしても、お燗して飲んでみるとまた違った味わいで飲めるということも知りました。お燗した方がおいしいものもあるし。お燗も温度によってまた味が変わるし。また、基本的に和食しか合わないと思っていたけれどとんでもない、どんな料理に合わせても飲めるというのも新しい発見でした。チーズと日本酒なんて、定番中の定番!  日本酒の楽しみ方にルールはないのです。

日本酒は大昔から造られていますが、年々醸造技術が進んで、長い歴史の中で最も品質の高いのは、今造られているものなのだそうです。つまり、現代が一番おいしい日本酒が飲める時代なのだそうですよ。だとすれば何と我々は幸せなのでしょう。せっかくそんな素敵なものがあるなら、お酒の飲める人は(あと大人はね)みんな楽しんでみませんか。もちろん焼酎もいいです。焼酎王国の出身者としてはやはりなくなったら寂しいですし、他にもおいしいお酒は世界中にありますが、たまには日本酒もね。
調べたら、国内で日本酒を醸造する蔵がないのは鹿児島だけでした。あとはすべての県で造られているんです。ですから手始めに皆さん、地元の(鹿児島の人は近くの)お酒を試してみてくださいな。できたらやっぱり【純米酒】をね。それからいろいろ広がっていくことでしょう。
あっ、それからもうひとつだけ。日本全国には、それこそいろんな日本酒があって、値段もホントにバラエティに富んでいます(!?)。その中でも基本的に安くておいしいものを探すというのも、楽しみのひとつにしています。その方が精神的にもふところにも優しいのでおすすめです(当たり前か)。安くておいしい日本酒はいくらでもありますよ!!

以上、コラムというより歩みののろいカメの日本酒レポートでした。







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